私の先生のひとりである、アレクサンダーテクニーク&アイボディ教師のマティアス ・アードリックさんのレッスンからは。とても学ぶことのできることが深く、私のところにいらっしゃる熱心な生徒さんたちにマティアスさんのレッスンを受講されることをお勧めすることがあります。
そのなかに数名のフォーカルジストニアの方たちがいらして、その方たちへのレッスンの評判がよいので、前回2015年6月にレッスンを受けたときにマティアスさんに訊いてみました。
わたくし「いったいフォーカル・ジストニアの方たちとどんなふうにレッスンしているの?。」
マティアス「彼らと特別なことはなにもしてないよ。
ひろひこもよく知っている通り、プレゼンスを意図して、空間の奥行きと広さを受け取ることができると、「からだ」全体から脳に向って、センセーションとフィーリングが立ち上ってくるね。
そしてそれを受け取った後に手放すと、新しい動きが起こるよね。
そして、その変化が脳にやってきて、それを手放すと、また新しいことが起こる余地が生まれる」
マティアス「いつもアイボディのレッスンでやっていること、そして今もひろひことやっているワークを、その方たちとも一緒にレッスンでやっているだけだよ」
マティアス「じゃあ、京子とワークしてみよう。」
ここからニャン語で記述。
マテニャン「プレゼンスを意図するにゃん。」
ひろにゃん「にゃん!」
マティアス「奥行きと広さを受け取るにゃん」
マティアス「神経系を通って、センセーションを受け取ったら、手放すにゃん。そうしたら、新しい動きが起こるにゃん」
マティアス「うまくいっているにゃん。
ニャン語ここまで。
これは大きな収穫でした。
私たちは、なにか特定の感覚を再現しようとしたり、 捕まえようとしたり、何が正しいのかよく分からないのに正しいことをしようとしたり、「こうしなければならない」と思ったり、「こうあらねばならならない」と思ったり、あるいは過去の辛い体験につかまりがちです。
そのような執着をそれを手放すことをアレクサンダーテクニークではインヒビションと言いますが。マティアスさんのレッスンはインヒビションについて、技術的でかつ具体的にレッスンされるので、私は継続して受講しています。
そう言えば東京女子医大で音楽家の手の専門外来をされている、フォーカルジストニアの権威酒井直隆先生が、以前講演会で。フォーカルジストニアはなんらかの過去の思い出がかかわっているようだと漏らされたことを思い出しました。
思い出、情動が絡みます。そうなると大脳辺縁系が関係します。
その過去の思い出が「からだ」と脳に残り、活動の選択肢の意識下の絞り込みに影響を与えると脳神経学者のアントニオ・ダマジオは、ソマティック・マーカー仮説を提唱しました。またスティーブン・ポージェスは、ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)を提唱しました。大きい小さいに関わらず私たちに備わった神経システムをはじめとするシステムが、起こった出来事に堪えられないと、本来働くはずの社会性を担当する神経システムがはたらきづらくなり、逃げるか戦うか(闘争逃走反応)を担当する交感神経が過剰に働くようになる。さらにもっと状態がひどくなると、交感神経も働きづらくなり、凍りつくと言いました。
そして、私たちの私たちのシステムを圧倒した出来事に対する未完了の定位反応、闘争逃走反応を完了することによって、神経システムは正常な反応を取り戻すと言いました。
つまり、刺激に対する反応は、ある程度私たちが経験してきた出来事に左右されるが(ダマジオ、ポージェス)、気づきを伴うある手続きを経て、私たちの反応はその状況に対するふさわしさを取り戻すことができるのです(ポージェス)。
アレクサンダーテクニークやアイボディでは、手放すことによって、別の言葉で言えば、過去の感覚や今生じた感覚に固執したり、捕まえたりしないで、あるいは、”正しい”とか”こうすべきだ”という気持ちを手放すことによって、現在の状況に対するふさわしい反応を取り戻します。
ソマティック・エクスペリエンシング(ソマティク・エクスペリエンス)では、別の手順を経て、過去の終わらなかったプロセスを終了させます。
この後、私自身が実践するアレクサンダーワークを見直して、フォーカルジストニアの方たちとレッスンするようになりました。今までとは異なった手応えがあります。
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