アレクサンダーテクニークのレッスンを受けていたハクスレーの小説を読む
オルダス・ハクスレー(1894-1963)の『ガザに盲(めしい)て』を読みました。
この作品を書いている途中でハクスレーは、心労から憂鬱的症状と不眠症に悩み、アレクサンダーテクニークの発見者F.M.アレクサンダー(1869-1955)のレッスンを受けました。そして回復し、「ガザに盲て」を完成させました注1。
ハクスレーのそれまでの作風は、一方で生を支える信念を求めつつも、他方懐疑的で、ハクスレーの知性は皮肉として現れていたそうです。しかし、ハクスレーのこの作品では、主人公が積極的に世界と向き合おうとします。注2
思索しながら、これからくる災難を予想しつつも、行動に向います。
アレクサンダーテクニーク教師の片桐ユズルさんから勧められる
実は今年2013年4月に福岡で片桐ユズルさん注3にお会いしたときに、この作品には、アレクサンダーテクニークの発見者F.M.アレクサンダーをモデルにした人物が登場すると伺っていました。
それ以来読みたいと思っていたのです。
アレクサンダーテクニークの発見者をモデルにしたジェイムズ・ミラー医師
作中のその人物は、ジェイムズ・ミラー医師と言いますが、F.M.アレクサンダーだけではなく、ハクスレー自身も反映しているようです。
とても洞察力の優れた人物として描かれていて、ハクスレーの分身ともいうべきアントニー・ビーヴィスを一瞥しただけで、彼の「からだ」の状態や精神の不健康な状態まで言い当てます。
そして食事や内臓の状態についても詳細に語ります。そして人間性全体について語ります。
この発言はF.M.アレクサンダーから来たのか、それともハクスレーから来たのか、今度ユズルさんにご意見を聞きたいと思います。
実は私は数年前から、全身のコーディネーションを高めるために、「内臓のボディマッピング」を工夫、実践し、生徒さんにも教えています。もちろん、「この内臓はここにありますよ」という類のお粗末なものではなくて、きちんと学習的体験も伴うものです。
もしジェイムズ・ミラー医師の内臓に関する発言が、アレクサンダーテクニークの発見者F.M,アレクサンダーから来たものでしたら、私は自分の方向に補強材料をいただけることになります。そうだったら、嬉しいです。
話を戻します。主人公アントニー・ビーヴィスは、このジェイムズ・ミラー医師との出会いで、非常に大きく感化され、人生を変えます。
そして自らを捧げる生き方に進むのです。
どのような道に進むにせよ、真実に自らの命を支えるものを欲し、それとともに生きるためには、世の東西を問わず、私たちは自らを何かに捧げるでしょう。
個人的にはハクスレーは文芸批評がよいですね。小説は中途版場です。同時代のD.H.ロレンスとは力量が比ぶべくもありません。
注1 「多次元に生きる 人間の可能性を求めて」オルダス・ハクスレー著 片桐ユズル訳 コスモス・ライブラリーの翻訳者解説を参照した
注2 「現代世界文学全集 19 ガザに盲て」翻訳者による解説も参照した。
注3 片桐ユズルさん。英文学者。詩人。アレクサンダーテクニーク教師。日本にアレクサンダーテクニークを持ち込んでくださった方。日本のアレクサンダーテクニークのゴッド・ファザー的存在。
アレクサンダーテクニークのメルマガ
コメントを残す