アレクサンダーテクニーク教師が考えた、ピアニストの指の開きにくさを解消する方法

アレクサンダーテクニーク教師も驚いた、ピアニストの手の痛みの原因

ピアノ演奏される方の中には、手の大きさの大小に関わらず、オクターブを弾くときに、あるいは分散和音を弾くときに、あるいはがじゅうぶんに開かない、痛い違和感がある、指が鍵盤に満足いくほど届かないという方がいらっしゃいます。

実際、ピアノを演奏する方たちの手の痛みの原因は、43%の方がオクターブ、32%の方は和音の演奏から生じるという統計データもあります(『解決!演奏家の手の悩み』酒井直隆 ハンナ)。

アレクサンダーテクニーク教師が考察した、指が開きにくい原因

指が開くに食い原因はいくつか考えられますが、ここでは4つほど挙げます。

1.実は指に問題があるわけではなく、鍵盤に指が向かうときに、あるいは打鍵する瞬間に、胴体の背中側、特に肩甲骨周辺や脇の下周辺を押し下げていること。

打鍵するときに、指に問題があるわけではなく、鍵盤に指が向かうときに、あるいは打鍵する瞬間に、胴体の背中側、特に肩甲骨周辺や脇の下周辺を押し下げていることによって、結果的に指が開きにくくなっていることがあります。

と申しますのも、ピアノを演奏するときに鍵盤から戻ってくる反力反作用)はとても大きいのですが、上記のような押し下げがあると、反力が分散されず、指や腕で滞り、関節周辺で力の衝突が起こり、傷めてしまいます。

そのような「からだ」のなかでの力の衝突を防ぐためには、指が鍵盤を押し下げるときに、からだの別の部分を押し下げる(押しつぶす)ことをやめて、常に全身が伸びやかでいる必要があります。

アレクサンダーテクニークで言うところの、head-neck-back coordination(日本にアレクサンダーテクニークをもたらした片桐ユズルさんの訳では、頭と首と背中の関係性)、あるいは頭と背骨の関係を整えることです。

もしピアノの演奏中あるいは演奏後に違和感。痛み。ひどい疲れをお感じでしたら、この反作用の力を瞬時に全身に分散する必要があります(ヨーゼフガート『ピアノ演奏のテクニック』音楽之友社)。詳細はこちらを参照ください。

2.手首をふにゃふにゃにして弾いていること

よかれと思って、そのようにご指導されるピアノの先生もいらっしゃいますが、誤っています。

”手首を柔らかく”して演奏するとい10うのは、ショパンも言いましたが、けっして手首をふにゃじにゃ、ぐにゃぐにゃにして演奏することではありません。ではどういう状態が手首を柔らかくすることなのかについては、4.で書きます。

3.指に関節技がかかっている=特に指先から3つ目の関節の位置を誤解している(脳の中の身体地図が謝っている)。

この問題については、多くのボディマッピングの本で論じられているので、別の機会に論じます。

4.指を閉じる筋肉が緊張していることと、親指をCM関節を伸展させる筋肉(長拇指外転筋長拇指伸筋短拇指伸筋)が緊張していることと

今回は扱うのは4.です。

親指をC(ド)に人差し指をD(レ)に中指をE(ミ)に手を鍵盤を弾くときのようにしてみましょう(指を開かない状態。手が指(拇指と他の四指と掌の関係が平面的になっていませんか?

実はこの状態は掌から拇指に向かう筋肉(屈筋群)と手の甲・指の甲側を通って拇指に向かう筋肉(伸筋群)が同時に緊張しやすいなります。

これを生理学的には、共収縮同時収縮と言います。平たく言えば、指周りが固まって動きにくい状態です。

この状態から鍵盤を弾こうとすると、動きをじゃまされるので、掌から拇指に向かう筋肉(屈筋群)が拇指が鍵盤に降りるたびに、さらに大きく緊張する必要があります。

そうなると他の四指も必ず固まります。たぶん反射の一種なのだと思いますが、握ろうとする動きが起こります。

また、ピアノを演奏するためには、掌を握りこむようにしては弾くことができませんので、同時に掌を開く筋肉も緊張します。 これがオクターブを弾くときに指や掌周辺にかかっている関節技の正体です。

実はこのとき同時に、手首や肘や肩や首や腰にも関節技が掛かるのですがそれに場合分けをしながら書くと、非常に文章が長くなるので割愛します。

指や手に関節技に関節技をかけない方法があります。

解決策⑴ 指がどこで曲がるのかはっきりさせる解決策⑵指だけに注意を払うのではなく、手の甲・掌にある指の根元の骨(中手骨)から指先にまで、なるべく均等に注意を払う

⑴などはボディマッピングの本にも書いてる方法なので、試された方は多くいらっしゃるでしょう。

⑵については、解剖学の本やボディマッピングの本を読んで指の根元にある中手骨の存在を知っても、それをどのようにしてピアノの演奏に使ってよいのかわからない方が多くいらっしゃるようです。 繰り返しになりますが、手の甲・掌にある指の根元の骨(中手骨)から指先にまで、なるべく均等に注意を払うことが必要です。

ここまで読んでいただきましたら、実際にオクターブを、分散和音を弾いてみましょう。

そして、ここまでだけでも指や手にあった違和感や痛みが軽減された方がいらっしゃるでしょう。

残念なことにその中には、別のところ違和感が増す方もいらっしゃるかもしれません。 そういう方は別の部分に掛かる関節技を解く必要があります。あるいは1.の全身を伸びやかに使うという課題を解決する必要があります。

ぜひアレクサンダーテクニークのレッスンをご受講ください。可能であれば、ピアノを演奏する方へのレッスンに長けている方が望ましいです。

解決策⑶ ピアノを演奏する手の”かたち “に気をつける。 実は反対のお仕事をする筋肉同士を同時に収縮することを予防しやすい かたちがあります。

アレクサンダーテクニーク教師も学んだ運動学の機能肢位
運動学の機能肢位

運動学には、機能肢位(きのうしい)という概念があり、ギプスで腕を固定するときに、できるだけ自由度を遺すための手の形で、手から指にかけて縦のアーチと横のアーチがあります。

これをピアノを弾く手の形も機能肢位によく似ていて、機能的優位を引き出しやすい手の形を仮に手の機能的優位なポジションと呼びます。

大東流合気柔術を嚆矢とする合気道などの合気系の武道で、”朝顔の手“と呼ばれているものに近いです。

重要なのは、単なる形ではなくて、拇指の中手骨と人差し指の中手骨とのあいだの筋肉を解放し、五指に関わる屈筋群と伸筋群が同時に収縮することを防ぐことです。 手を強張らせて、同じような手の形を作っても、意味がないどころかかえって有害です。   屈筋群と伸筋群が同時に収縮することを防ぐための具体的方法について書くと、とても煩雑ですので、ここでは割愛します。もしご興味がございましたら、実際にアレクサンダーテクニークのレッスンをご受講ください。

ここまでのアレクサンダーテクニーク教師のアドバイスに従って、オクターブや分散和音を弾く

では、以上のことに気をつけて、オクターブや分散和音を弾いてみましょう。

手の機能的優位なポジションから手を開き、手を開く必要がなくなったら、必ず手の機能的優位なポジションに戻ってきてください。

いかがでしたでしょうか?

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アレクサンダーテクニーク教師かわかみひろひこのレッスン

2件のコメント

アレクサンダーテクニークとても興味を持ちました。右手が左ほど開かず悩んでいましたがこのブログを見て
実践。「あれ?!」と驚くほどすぐ開くように!背中、肩甲骨が力んでたんですね。私の場合は肩甲骨を下げる
意識を持つ方が今は放松出来るようですが。時期が来たら是非、先生のご指導を受けたいと思います。
ありがとうございました。

ピアノ初心者様は、放松(ファンソン)という専門用語を使っていらっしゃるので、太極拳をなさっているのでしょうか? 太極拳をされる方の場合、肩甲骨を下げるでもうまくいくことがあるようです。私が今まで見てきた経験では。
ふつうの方はあまりうまく使えない前鋸筋をかなり効果的に使えるのが理由ではないかと思っています。
 
お会いする機会を楽しみにしております。

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ABOUT US
かわかみ ひろひこアレクサンダーテクニークの学校 代表
第3世代のアレクサンダーテクニーク教師。2003年より教えている。 依頼人である生徒さんへの共感力、課題改善のための活動の動きや言葉に対する観察力と分析力、適確な指示、丁寧なレッスンで定評がある。
『実力が120%発揮できる!ピアノがうまくなる からだ作りワークブック』、『実力が120%発揮できる!緊張しない からだ作りワークブック』(ともにヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)の著者。
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