前腕の回内・回外に関する『音楽家ならだれでも知っておきたいからだのこと』の間違い

前腕の回内・回外の2つの軸

前腕の回内・回外の2つの軸。『新・動くの解剖学』を参照して作成。

音楽家ならだれでも知っておきたいからだのこと』(誠信書房)や『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』(春秋社)を読んで、私のレッスンにいらした方の中には、ピアノ奏者でトレモロが苦手な方もいらっしゃいます。

 

トレモロってなに?と思われたあなた、大丈夫です。最後まで読んだら、役に立つことが書いてありますから。

 

トレモロを見ていると、動きがおかしい。。。そこで、

私「回内・回外の動きの軸は、どこかご存じですか?」と聞いてみると、

生徒さん「小指側にある尺骨ですよね? 『音楽家ならだれでも知っておきたいからだのこと』を読んだので知っています」

と判を押したようにお答えになります。
 
 

私「そうなんですね。でも、もしそうだとしたら、ドアノブを回すことはできなくなりませんか?」

生徒さん「あれ?。。。そうですね。たしかにそうですね。」

 

そういうことです。

前腕の回転(回内・回外)の動きには軸が2つある

1本目の軸=尺骨を通る

たしかに、本のページをめくる動きは、尺骨を軸にして、回内する動きに確かに近いです。軸になる尺骨も動きますが。。。

 

2本目の軸

ピアノでトレモロを弾くときの前腕の回内・回外運動の軸

ピアノでトレモロを弾くときの前腕の回内・回外運動の軸
『新・動きの解剖学』などをもとに作成

でも、ドアノブを回すとき、トレモロを弾くときには、回内・回外の軸は、尺骨は肘の近くしか通りません。この動きに関しても、尺骨を軸にして、尺骨が動くと説明できないこともありませんが、そんなことを思って動いたら。。。動きにくいです。

 

ピアノでトレモロを弾くときの前腕の回転(回内・回外)の軸は、

  1. 尺骨の一部と
  2. 尺骨と橈骨のあいだと
  3. 橈骨の一部

を通ります。

 

なお、図では軸は中指を通っていますが、引く鍵盤の位置によって、手首の関節が尺屈したり、橈屈したりするので、回内・回外の軸は、必ずしも、中指を通るとは限りません。

 

著者たちが間違えた理由

では、どうして『音楽家ならだれでも知っておきたいからだのこと』にこういった中途半端な情報(誤った情報)が掲載されたのか。

 

あくまでも私見ですが、理由は3つ考えられます。。

1.参照した本が間違えていたから

実はこれらの本が参照した本『動きの解剖学』の旧版の記載がそうなっていたからです。

なお、『動きの解剖学』の旧版は骨盤の傾きについても、誤った図を掲載していますが、その誤りを『音楽家ならだれでも知っておきたいからだのこと』(誠信書房)や『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』(春秋社)はともに踏襲しており、「動きの解剖学」の旧版掲載の誤った図を元に作成したと思われる図を掲載しているため、蓋然性は高いと言えましょう。

骨盤の向きに関するよくある勘違いについて

 

ちなみに『新・動きの解剖学』(新版)には回内・回外の2通りの軸が掲載されています。

 

2.著者たちは尺骨を敷くだと思うことで、楽になったから

これまで、前腕の親指側の橈骨側への意識が強すぎた場合には、尺骨側を強く意識することによって(小指リードと思うことによって)、前腕の回転(回内・回外)が楽になるケースは起こりえます。

 

しかし、それは上記の本にあるように、回内・回外をするときに、尺骨が動かないということや、尺骨が軸となるということを、文字通り実践した結果ではありません。

  • 「前腕は尺骨が軸となって回転します」『音楽家ならだれでも知っておきたいからだのこと』誠信書房 59ページ
  • 「前腕が回転するときに尺骨は動かない」「腕の小指側が回転の軸だということをイメージしながら(中略)動かせば、前腕の動きは楽で自由なものになります」『音楽家ならだれでも知っておきたい「からだのこと」』春秋社 94ページ

あくまでも、注意が向いていなかった部分に注意が向くようになった結果と考えるが妥当ではないでしょうか?

 

3.同調圧力!?か誤解の継承!?

上記の著者たちは師弟関係にあり、あまりオープンに師匠の誤りを指摘できなかったのか、弟子の方も勘違いしていた可能性があります。

 

教える技量と解剖学的な適切な知識は一致していない場合もありますから、彼らの教える技量を否定するつもりは、私にはございません。

 

そうは言っても、脳の中の身体地図=ボディマップの勘違いをやめる本(ボディマッピングの本)で、こういった誤りがあるのは、とても残念です。

 

 

なぜ誤りが放置されているのか

実は放置しているのではなくて、著者にも、日本語版出版社の編集担当にもお知らせしています。

 

15年以上前に原著者のバーバラ・コナブルさんには封書と電子メールで詳細に指摘させていただきました(『新・動くの解剖学』の出版前です)。

10年前には、日本語版の出版社の担当の方(数年前に退職)にもお知らせしています(流れましたが、私が誠信書房さんから翻訳本を出す話があり、その際にお話ししました)。

しかし力及ばず、改訂されることはありませんでした。

 

そこで従来は、実際にレッスンにいらした生徒さんとのあいだで、上記の本たちが話題に出たときにだけ、この誤りについてお話してまいりました。

 

しかし、同じ業界に身を置くものとして、こういった誤った記載に関する情報の公開先を限定することには、ずっと良心の呵責を感じていました。

 

関連項目

ピアノ演奏で、トレモロを楽に弾けるようになりたい方は、こちらをご参照ください。

ピアノでトレモロをうまく弾けるようになるためのコツ

『実力が120%発揮できる!ピアノがうまくなる からだ作りワークブック』より詳細にお知りになりたい方は、

拙著『実力が120%発揮できる!ピアノがうまくなる からだ作りワークブック』(ヤマハミュージックメディア)をご覧になるか、

かわかみのレッスンをご受講くださいませ。

 

本のやり方で解決しない場合には、別の課題が隠れていることがあるので、レッスンでは、それをいっしょにみつけて、確実に課題を解決できます。

 

 

 

 

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