不遇だったアレクサンダーテクニークのベテラン教師ヴィヴィアン・マッキーさん
2004年より前でしたが、ベテランのアレクサンダーテクニークの教師で、チェロ奏者でもある、ヴィヴィアンさんに、どうやって音楽関係の方たちにアレクサンダー・テクニークを広げていったのか聞いたことがある。
今でこそ、英国王立音楽院やその他のイギリスの音大で、アレクサンダーテクニークはカリキュラムとして取り入れられているが、けっしてずっとそうだった訳ではない。
だから私は日本でアレクサンダーテクニークを教え始めようと思ったときに、イギリスでそれをやった人に聞くのがいちばんだと思って、ヴィヴィアンさんに質問した。
ヴィヴィアン・マッキーさんはは答えた
「そうねえ。今から考えるとベストな方法ではなかったのかもしれないけれど、だれもアレクサンダーテクニークのことを知らなくて。
私は多くの人に知ってもらいたかったし、アレクサンダーテクニークが多くの音楽家たちに役立つことを知っていたから、ただで良いから、教えさせて、とお願いした。
私の後に入った人は、きちんとお金を貰ったかもしれないけれど、私は貰わなかった」
アレクサンダーテクニーク教師かわかみひろひこのヴィヴィアン・マッキーさんのお話の感想
ヴィヴィアン・マッキーさんのこの話を聞いたときに、物事には”始まり”というものがあるのだと思った。
そして、私は恵まれていると感じた。
2012年8月2日に東京学芸大学教育学部音楽学科にて、学部生100英の方たちにアレクサンダーテクニークのお講座をする機会をいただいたが、先方からオファーをいただいたし、きちんと講師料もいただくことになっている。
私は恵まれているな、と本当に思う。
ヴィヴィアン・マッキーさんは、ある人たちによれば、アン・バティさんと並んで、イギリスでは第2世代を代表するアレクサンダーテクニーク教師だと言われているそうだ(もちろん他にも、素晴らしい教師はたくさんいるのだろう)。
そのヴィヴィアンが、無料で何年も教えていたのかと思うとなんか切ない。
著書「自然に演奏してください」にも、今までカザルスの奏法について、だれからも聞かれたことがなかったという発言が書いてあった。
彼女は、もっと評価されてしかるべきなのに、そうでない不遇の時代が長かったのだと思う。
それでも、たゆまずに前進を続け、今日の英国でのアレクサンダーテクニークの隆盛の歴史を作り上げた主要な登場人物のひとりとなった。
私たちは、ともすれば自らが世間に認められず、怨むことがある。しかし、そんなときこそ、少し待って、自分自身ぜんたいを思い出す必要があるのだ。
「自然に演奏してください―パブロ・カザルスの教えとアレクサンダーワークの共鳴」
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