不遇だったヴィヴィアン・マッキーさん

今から8年以上前でしたが、ベテランのアレクサンダー・テクニークの教師で、チェロ奏者でもある、ヴィヴィアンさんに、どうやって音楽関係の方たちにアレクサンダー・テクニークを広げていったのか聞いたことがある。

今でこそ、英国王立音楽院やその他のイギリスの音大で、アレクサンダー・テクニークはカリキュラムとして取り入れられているが、けっしてずっとそうだった訳ではない。日本で、教え始めようと思ったときに、イギリスでそれをやった人に聞くのがいちばんだと思ったのだ。彼女は答えた

「そうねえ。いまから考えるとベストな方法ではなかったのかもしれないけれど、だれもアレクサンダー・テクニークのことを知らなくて。
私は多くの人に知ってもらいたかったし、アレクサンダー・テクニークが多くの音楽家たちに役立つことを知っていたから、ただで良いから、教えさせて、とお願いした。

私の後に入った人は、きちんとお金を貰ったかもしれないけれど、私は貰わなかった」

その話を聞いたときに、物事には”始まり”というものがあるのだと思った。

そして、私は恵まれていると感じた。

2012年8月2日に東京学芸大学教育学部音楽学科にて、学部生100英の方たちにアレクサンダー・テクニークのお講座をする機会をいただいたが、先方からオファーをいただいたし、きちんと講師料もいただくことになっている。

私は恵まれているな、と本当に思う。

ヴィヴィアン・マッキーさんは、ある人たちによれば、アン・バティさんと並んで、イギリスでは第2世代を代表するアレクサンダー・テクニーク教師だと言われているそうだ(もちろん他にも、素晴らしい教師はたくさんいるのだろう)。

そのヴィヴィアンが、無料で何年も教えていたのかと思うとなんか切ない。

著書「自然に演奏してください」にも、今までカザルスの奏法について、だれからも聞かれたことがなかったという発言が書いてあった。

彼女は、もっと評価されてしかるべきなのに、そうでなない不遇の時代が長かったのだと思う。
けれど、たゆまずに前進を続け、今日の英国でのアレクサンダー・テクニークの隆盛の歴史を作り上げた主要な登場人物のひとりとなった。

私たちは、ともすれば自らが世間に認められず、怨むことがある。しかし、そんなときこそ、少し待って、自分自身ぜんたいを思い出す必要があるのだ。

「自然に演奏してください―パブロ・カザルスの教えとアレクサンダーワークの共鳴」
http://astore.amazon.co.jp/alexandertechnique-22/detail/4833152371