- 結び
- 初出:mixi2008/2/07
- 最終更新日:2023/11/19
1.他者の行為の鏡のように働く、ミラーニューロンの発見
1990年代初頭にサルの脳に電極をつないでさまざまな活動をさせる実験で発見されたのがミラーニューロンです。脳科学上の一大発見でした。
どのような実験だったかというと、サルにモノをつまませて(事前にそのような芸を仕込んで)、脳の中のどの部位に対応しているのかという実験でした。
休み時間に、科学者たちがなにか(よく本に書いてあるジェラードというのは誤りらしい)をつまんでいるときに、それを見ていたサルの、そのサル自身がモノをつまんだときに働いていた脳のある部位が、あたかも自分自身がつまんでいるときと同じように反応していたのです。
その部位は、人間で置き換えると言語ともかかわりの深い場所(言語野)の近くでした。そして後になってファンクショナルMRIによって、人間についても、そのニューロンが発見されました。
「鏡に映したように、自分がある行為をしても、他者が同じ行為をするのを見ても活動する」(『心を生みだす脳のシステム』茂木健一郎著 NHKブックス31頁より)ニューロンです。そして、ミラーニューロンと名づけられました。
「ミラーニューロンのようなニューロンが生み出されるためには、感覚情報と運動情報が渾然一体とならなければならない。このような感覚と運動の統合の過程も、志向性のネットワークによって実現していると考えられる。」(前掲87頁)
2.自分の行為が他者の行為の鏡になる
他者と共感できる能力・他者に適切なアドバイスをする能力の前提になっていると茂木先生の本には書いてありました。
しかし、もう少し踏み込んで考えると、他者の行為を見たときに、自分が同じ行為をしたときと同じニューロンが活動するのですから、他者への観察力が注意深くないと、自分自身を基準にするあまり(無意識的な認知のプロセスです)、
(1)他者に共感できない能力
(2)他者に適切なアドバイスができない能力
の前提になってしまうこともあるのでやないでしょうか。。。
あるいは
(3)習い事において、先生やうまい人を見ていても何も学べない事態
起こりえます。
アレクサンダーテクニーク教師が見た、人の適切にアドバイスできない能力
(2)についてはずいぶん前に前こういうことがありました(※ 筆者注:どなたが関わった事例であるのかを特定することをを防ぐために。複数あったエピソードを1つにまとめています)。
カルチャーセンターのお講座にいらしたフルーティストの方が
「演奏するときに呼吸が苦しい」とおっしゃいました。
それについてはレッスンの中で解決したのですが、クラスにいらしていた整体の先生が、うまくいったワークの後で、次のようなことをおっしゃいました。
「フルートを演奏するような行為はからだを捻るから、体に悪いからやめるべきだ」
えっ! そんなことはないのに。。。
でも、それはとても率直な発言でした。
そこでその方にフルートを演奏するまねをしていただきました。
確かに、頭を胴体の方向に押しつけ、胴体を妙な形に捻っていました。
そこでもう1度言葉と手を使ってその整体の先生をご指導したら、
「あっ。これなら捻れませんね」
私は次のように答えました。
「そうでしょう。やり方しだいで、からだに悪くもよくもなるんです。
そしてさっきのフルーティストの方は、いちばん最初にひとりで貴方がされたのよりも、最初からずっと楽にフルートを構えていらしたんですよ。」
その整体の先生も納得されていました。
自分自身が「つながり」のよい「からだ」の使い方を実践できて、その上でよく観察しないと、私たちは独善に陥って他の方たちにアドバイスするときに間違いを犯します。
反対に少しでも「つながり」のよい「からだ」の使い方を経験すれば、観察の仕方はまるで変わってしまうということもありうるのです。
人間の学ぶ能力はなんと素晴らしいことか。
(3)については、みなさんのなかにも経験された方がいらっしゃるかもしれません。あるいは今まさに習い事や芸事で伸び悩んでいらっしゃるかもしれませんね。
3.結び-アレクサンダーテクニークのレッスンの勧め
からだ全体をつながりよく使えていないと、他の人たちへの観察力すら当てにならなくなるのです。
人間の受け取る情報のなかで視覚に頼る比重が大きいことを考えれば、これはおそるべきことです。
観察力を向上させるためのもっともよい方法は、からだ全体をつながりよく使えるようになることであり、私が知る限り最適な方法は、アレクサンダーテクニークのレッスンを受けて、日常生活で実践することです。
コメントを残す