演奏家が舞台の本番での緊張やあがり症の原因をアレクサンダーテクニーク教師が情動という観点から解説
今回は演奏家の舞台の本番での「あがり症」や「緊張」で実力が発揮できないこと、つまり音楽心理学で言うところの音楽演奏不安を改善する方法を、「情動」という観点から書きます。
脳科学では、「情動」というものが人間には備わっていると考えています。
情動とは、感情の基本的な部分だと思ってください。
この「情動」を構成するものは「快情動」と「不快情動」です。
食料を得るための「接近行動」は快情動、敵に対する「攻撃行動」や「回避行動」は不快情動
によって引き起こされると言われています。
この「不快情動」がどうやら、「あがり」や「緊張」に不具合に関係しているようです。
この情動を直接コントロールできれば話が早いのですが、それは不可能だと言われています。
しかし、この情動に影響を与える3つの要素というのがありまして、
- 骨格筋(からだを動かす筋肉・呼吸に使う筋肉)が適度な緊張と弛緩を繰り返すことができるのかどうか
- 内臓の状態
- 体内環境(内部環境):体内のホルモン・神経伝達物質・栄養の状態
です。
これらの3つの要素については、ある程度働きかけることが可能です。
そのプロセスと通じて、間接的ですが、情動に働きかけることは可能です。
ちなみに、骨格筋が健康的に働くようになると、マイオカシンと総称されるホルモンが筋肉から分泌されるようになりますので、1.と3.は関係します。
また、1.から3.は自律神経の働きとも密接に関係します。
アレクサンダーテクニークで骨格筋に働きかける
少なくとも、骨格筋については、アレクサンダーテクニークを使って、状態を
改善していくことができます。
かわかみひろひこのアレクサンダーテクニークのレッスンをご受講されるか(対面でもオンラインでも実施中)、ひとりで工夫されたい方は、アレクサンダーテクニークの原理を応用して書いた拙著『実力が120%発揮できる!ピアノがうまくなる からだ作りワークブック』(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)をご参照ください。
内臓のボディマッピングで内臓に働きかける
内臓についても、同様です。ただし、早く改善するためには、アレクサンダーテクニークのみでは不十分で、内臓のボディマッピングを行うと、比較的効率よく改善することができます。
ただし内臓のボディマッピングは、人によって効果がまちまちで、非常にすぐに効果が現れる方と、何をしているのかさっぱり分からないという方に分かれます。
後者の場合でも、エクササイズの手順を続けていただくと、効果が現れる場合もあります。
内臓のボディマッピングは、かわかみひろひこのオリジナルの手順なので、かわかみの個人レッスンをご受講されるか、もっとも簡単な手順を『実力が120%発揮できる!緊張しない からだ作りワークブック』(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)に書きましたので、そちらをご参照ください。
アレクサンダーテクニークで体内環境に働きかける
栄養に関しては、食事に気をつけていただくとして、もしコムラガエリによくなる方がいらしたら(いわゆる「つる」というやつです)、カルシウムとマグネシウムを補います。
それでもだめだったら、一度お医者様に内臓の検査をしていただいた方がよいでしょう。
ホルモンは内臓から分泌され、神経伝達物質の一部は内臓から分泌されますので、内臓のボディマッピングで間接的にですが、働きかけることができます。
脳内で分泌される神経伝達物質に好影響を与えらるとしたら、
- いかに自分自身を信頼できるか、
- 自分自身を追い立てないで、ご自分に余裕を与えることができるかどうか
ということに関わってきます。
「こころ」は脳の機能だから、ご自分に余裕が与えることによって、脳が変わることはけっしてないと反論される方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、実際の生活の中ではいかがでしょうか? 「こころ」の持ちようがその後の人生を変えたことは1度もありませんか?
フランスの認知科学者のヴァレラが、この「こころ」が脳に与える可能性について書いていますので、ご興味をお持ちの方はヴァレラの本をどうぞお読みくださいませ。
なにか活動に入る前にご自分自身に余裕を与えること—アレクサンダーテクニークの用語ではこれをインヒビション(抑制)と言いますが、言葉のイメージと内容に乖離があるので本を読んでも分かりにくいところです—これについてはレッスン全体を通じてワークしてまいります。
結び-自律神経の観点からの視点はアレクサンダーテクニーク教師かわかみひろひこの2冊目の本をご参照ください
演奏家の方たちの「あがり症」や「緊張」による不具合、音楽心理学で言うところの音楽演奏不安の改善について書こうと思っていましたが、書き終えたところ、演奏家だけではなく、すべての方に当てはまることを書いていました。
自律神経に関するポリヴェーガル理論の観点から、演奏家(音楽家)の舞台の本番での緊張やあがり症の解決方法は、拙著『実力が120%発揮できる!緊張しない からだ作りワークブック』(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)に詳しく書きましたので、そちらをご参照ください。
参考文献-アレクサンダーテクニーク教師が考える、演奏家の「あがり症」や「緊張」による不具合の改善について
『内臓感覚 脳と腸の不思議な関係』福土 審 著 NHK出版 2007/9/27
演奏家における緊張・あがりの実態 吉江 路子氏 2014年12月24日
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