先週2019年9月13日(金)に、宮城県仙台市の愛子(”あいこ”ではなくて、”あやし”)で開催された、河合楽器の音楽教室の東北地区のピアノの先生たちのカワイ音楽教育シンポジウムに呼んでいただき、アレクサンダーテクニークとボディマッピングの講座をしました。
273名の受講者の方たちがいらっしゃいましたが、今回も座学にせず、F.M.アレクサンダーが主著の1つ”Use of the self”の第1章に書いてある、F.M.アレクサンダー(1869-1955)の経験をアレンジしつつ、追体験いただきました。
7割以上の方が今回のプログラムを見るまで、アレサンダーテクニークもボディマッピングも聞いたことがない方たちでした(これは普通のことです)。
視界に関する注意事項
要録もご覧になり、なんとなく「からだ」のことをするらしい、と思ってはいらっしゃるようでしたので、最初に視界に関する注意事項とゲームをしました。
「からだ」の感覚に注意を向けようとすると、ものすごく視界を狭くして、うつむき加減になる方がかなりの比率でいらしゃるのです。なかには演奏しようとすると、そうなってしまう人もいます。
そうなってしまった生徒さんに対して、少人数のグループレッスンや個人レッスンでは、
「感じるのではなくて、”思う”ことが重要です」というのを海外のアレサンダーテクニークのベテランの教師の方たちがけっこうおっしゃるのですが、私がそれを言ったら”謎かけ”になり不評なので、
視界を極端に狭くしたり、極端に広かったり、内側を見るような眼をすると
- 重心があがって浮足立つ=地に足がつかなくなる(ふわふわする)
- 支えがなくなる
- あがり症や過度な緊張の原因になる
という残念な結果になることを。ゲームをして経験いただきました。まずは舞台の上で、その後全員の方にふたり1組で行いました。
ゲームの内容は拙著『実力が120%発揮できる!ピアノがうまくなる からだ作りワークブック』に書きましたので、ご興味のある方はご覧ください(同じ内容を何度も書くと、WEBの掲載順位が落ちるので)。
立体的な輪郭を思い出すゲーム
先ほどの視界のこともそうなのですが、身体に、あるいは「からだ」に注意を向けるというのは、そこに集中して、なにかを捕まえるモードになることではありません。
それだと、脳の前頭前野が働きすぎて、過度なコントロールをして、今までうまくいっていたことすら、うまくいかなくなることがあります。
そうではなくて、コンサート会場の全体や(共演者や)楽器や全身からの情報に対して、開いてはいるけれど、情報が脳にのぼってきたら、すかさず手放す必要があります。
うまくいくには、脳科学で言うことろの身体化(エンボディメント)が必要になります。
そのための第1歩として、皮膚のボディマッピング「皮膚、皮膚。。。」のワークをしました。これもやり方は拙著に書いています。たまに会場からの声を拾いましたが、例えば片脚について行うと、
- 「そちらの側の脚の力が抜ける」あるいは
- 「しっかり立っている」
等のフィードバックがありました。
動ける姿勢=力強さの源は呼吸に伴う背中の動き
いわゆる”正しい姿勢”は動きにくい姿勢
よく世間で言われている”正しい姿勢”というのがあります。踵・お尻・背中を壁に着けて、頭を後ろに引く。
そのようにすると、
- 首周りの筋肉が固くなって、頭を動かしにくくなる
- 筋肉の緊張で脳に向かう血管が圧迫され、頭痛の原因になる
また肩甲骨と肩甲骨のあいだの筋肉が緊張し、広背筋という背中側の大きな筋肉(二の腕を下ろす筋肉)も緊張し、
腕が動かしにくくなります。
それだけでなく、胴体の正面から脚に向かう筋肉、背中側から脚に向かう筋肉が同時に緊張し、脚も動かしにくくなります。
ようするに全身の筋肉がいっせいに緊張して動きにくくなります。
これもお互いの「からだ」に触れて、筋肉が固くなるのをご経験いただきました。
よかれと思ってやっているけれど、実は有害な結果をもたらすことがあることを(ゆう結果に対して)、私たちは意外なほど行っているということを毛ご経験いただきました。
前傾姿勢・顎を極端に突き出す姿勢、背中を丸める姿勢も負担がかかる
もちろん前傾したり、顎を極端に前に突き出しだり、背中を丸めつような姿勢も、動きにくい姿勢です。
そのような姿勢になると前に転倒しないように、背中の筋肉が引き延ばされながら緊張します(遠心性収縮または慎重性収縮)。いずれにしても腕が動きにくくなりまし、呼吸に伴う背中側の動きがなくなります。
気がつかないうちに、行っている癖のもたらす有害な結果をご経験いただきました。
機能的優位な姿勢
では動きやすい姿勢=ピアノが演奏しやすい姿勢は、どんな姿勢かというと、全身の各パーツがそれぞれの働きを持ちつつ、全体として統一されて動くことができる姿勢です。
詳細は拙著のpart.1をご覧ください。あるいは私のレッスンを受けてください。
そのような姿勢の時には呼吸に伴い背中側や胴体の側面がよく動けるようになり、力強くなります。
写真は実際にみなさんに体験していただいている場面です。
ピアノの演奏
3名の方とピアノを演奏するときにアレサンダーテクニークを使う実験をしました。
どのようなことを行ったのかというと、
演奏中に頭で大きくリズムを取らない
大きくリズム取ると、首や肩の筋肉がいっせいに緊張して動きにくくなります。
そうではなく、環椎高騰関節(頭蓋骨と背骨とのあいだの関節)で、曲と同じリズムと、頭部がものすごく小さく傾いたり・、戻ったりすると、背中側も広がりやすくなり、演奏しやすくなります。
詳しくは拙著かレッスンで。
打鍵の際に指で鍵盤を押し下げるが、脇の下は押し下げない
脇の下を押し下げると、胸から腕に向かう筋肉と、背中側から腕に向かう筋肉とがいっせいに緊張し、腕が動きにくくなります。
リラックスしようとして、あるいは腕の重さを鍵盤にかけようとして、そのようになる方が多いので注意が必要です。
詳しくは拙著かレッスンで。
和音やオクターブが難しい
全身を伸びやかにして、動ける状態にしておくことと、親指の3つの伸筋の過剰な緊張をほどく必要があります。
詳しくは拙著かレッスンで。
上行・下行
肩甲骨と胸横筋の方向。
そして股関節が一方は内旋するが、他方は外旋する。
詳しくは拙著かレッスンで。
結び
このような大きなところで講座ができたのは、受講者の方たちと会をオーガナイズしてくださった方たちや裏方としてスタッフのみなさまのおかげです。
感謝します。
ピアノを演奏する方とのレッスンについては、こちらをご参照くださいませ。
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