F.M.アレクサンダーと同時代人のユングの心理学研究会に参加
昨日はユング心理学研究会の読書会がありました。
ご存知のない方のために説明しますが、アレクサンダ-テクニークの発見者F.M.アレクサンダー(1869-1955)は、C.G.ユング(1875-1961)の同時代人です。
よい機会だったので、かねてから疑問に思っていたことについて質問しました。
「ユングは、霊性と魂とからだの3分説を採用していて、これはプラトン・アリストテレス・プロティノス以降に、ヨーロッパで主流になっていた哲学上・宗教上の考え方に沿っています。
人間の理性というのは、神あるいはイデア(ヌース)の境域に近いという考え方です。
その一方で、ユングの同時代には、ハイデッガーその他の哲学者が、人間の理性が神に通じるものであるということを前提としない哲学を創始しました。彼らは、”こころ”の領域を1つのものとして扱いました
ユングは当然そのことを知っていたと思うのですが、3分説よりも2分説の方が正しいのではないかって考えたことはなかったのでしょうか?」
それに対するユング倫理学研究会副会長(当時)白田信重さんの答えは相変わらず冴えていました。
「近代心理学は、”こころ”の領域を1つのものとして扱ったことから始まりましたが、ユングは心理学者として3分説を唱えた最後の人物といってよいです。
そしてユングは、”こころ”の領域を1つのものとして扱うことに躊躇していた。1つのものとして扱えば、西欧文明は滅ぶとまで思っていた。
少なくとも、集合的な意識と自分の意識を分けることの必要を感じていました。同時代にナチスの横暴にも懲りましたしね」
なるほど、同時代の2分説を採用した哲学者で、ヨーロッパを代表するといってもよいハイデッガーが、ハーケンクロイツの腕章をつけて、右手を挙げて変なことやってしまって。
なんであんなに知的な人がおかしな方向に行ってしまったのだろう?とかねてから思っていたのですが、彼の学問の手法に問題があった訳ね。なるほど。
他にも、ユングに関しては、ナチスに関して協力した疑いとナチスからユダヤ人を守った事実など、様々な矛盾するお話が受講者たちから出てきて、それについても白田さんが「まだ資料がじゅうぶんではない。出揃っていない」と中立的な立場で回答されたのもよかった。
実際フランスでは、ナチズムとの関連を疑われて、ユングについて語ることがタブーになっているそうです。
ただ最近明らかとなった事実として、ユングがアメリカ合衆国のCIAの前身のOSIのエージェントとして活動していたことが明らかになったことが紹介されました。
ナチスを探っていた訳です。
あまり馴染みのない話かもしれませんが、欧米では諜報各道のエージェントにはかなりの知的エリートがなるケースがあり、もっとも優秀な大学の先生がなることもあるのです(元外務省主任分析官で、作家の佐藤優氏の著作を参照しました)。
いずれにせよ、ユングはとても危険なところにいたことは間違いないようです。
アレクサンダーテクニークの発見者は最初は著作で3分説を採用し、次に2分説を採用した
アレクサンダーテクニークを発見したF.M.アレクサンダーは、著作の中で最初は3分説を採用しました。自己とは身体と心と霊性を統合したものだと言いました。
それは彼自身の発明と言うよりも、ヨーロッパの哲学的な伝統を踏まえたものだったのです。
けれど当時のイギリスでは神智学が盛んになってきていて、アレクサンダーテクニークの支持者の文化人たちから、
F.M.アレクサンダーは「霊性」について書いたら、神智学の人たちと同じだと思われるよと忠告されて、自己とは身体と心を統合したものだ言いなおしました。
2013年4月にユング心理学研究会でアレクサンダーテクニークをご紹介します
来年の4月にユング心理学研究会で発表することになりました。やるのはアレクサンダーテクニークです。
F.M.アレクサンダー(1869-1955)
カール・グスタフ・ユング(1875-1961)
まったくの同時代人のふたりが、それぞれ多くの文学者から科学者などの知的エリートを幅広く巻き込みつつも、けっして交わらなかった(共通の知り合いがひとりもいなかった)ことや、用語の定義の違いや、人間の捉え方の違いや、手法の違いを紹介しつつ、アレクサンダーテクニークをご紹介したいと考えています。
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