緊張したり、あがったりして、実力が発揮できないのは、メンタルが弱いからではありません。
音楽心理学の分野では、演奏家における緊張・あがり症は「音楽演奏不安(music performance anxiety)」と呼ばれ、1980年代ごろから、欧米を中心に研究が行われるようになってきました。「十分に練習しているにも関わらず、本番になると練習と同じように演奏できなくなる状態」のことを指します。
緊張・あがり症によって演奏の質が低下してしまう人は46%もいるというアメリカの研究もあります。
参考 吉江路子(2014年)『演奏家における緊張・あがりの実態』ON-KEN SCOPE
しかし、実際には上記の学問的な研究にも、見過ごされている大きな盲点があります。
メンタルが弱いから
演奏する身体やメンタルの基礎になる身体の反応や働きが演奏に適した状態になっていないことが原因です。
みなさんは、どれがいちばん手強い課題だと思いますか?
もちろん人によって、異なります。
しかし、3.は、多くの方が思っているよりも、強敵です。
冒頭でご紹介した音楽演奏不安の定義を思い出してください。「十分に練習しているにも関わらず、本番になると練習と同じように演奏できなくなる状態」です。
そして、この「十分に」かどうかを判断するのは、アンケートに回答した回答者の演奏家たち自身です。
演奏家は、プロやアマを問わず、自分に厳しい人が多く、実際には長時間練習し、涙ぐましい努力をしているのにも関わらず、思ったような結果が出ないと、「練習が足りないから。うまくいかなかったのだ」と判断しがちです。そしてこれらの方たちは、上記の統計(46%の方が緊張やあがり症によって、演奏の質が低下する)から漏れています。
しかし実際には、練習の時間が足りないことが原因ではなく、長時間の練習にもかかわらず、なんとか演奏できる状態にまで仕上げられない技術の不足が原因です。
この技術の不足を解消するには、日々の練習で、演奏技術を身体に負担なくできるように洗練し続ける必要があります。
前提が誤っているので、どんなに努力しても、努力の方向が間違えているので、解決できません。
緊張やあがり症の原因は、メンタルの基盤にある身体の生理的な反応が、状況に合っていないことです。
緊張したり、あがったりする方たちがよく訴える下記の例が、真逆であることがお判りになりますか?
・緊張しすぎて、客席のことなど見えないし、目に入らない。
・客席にいる知り合い全員の顔がよく見えて、ものすごく緊張する。
・緊張して不安で仕方ないのに、身体に力が入らず、楽器を構えるのもやっとである。
・緊張して、頭がぼうっとしているのに、身体はこわ張っている。
理由2に述べたように、緊張しているときの体験談は、真逆の話があり、ひとりひとりに起きていることが異なる以上、だれかにとって効果的だった方法が、私たちに効果がない場合があります。
お悩み≠解決すべき課題
お悩みの原因として、私たちの「からだ」のなかでどのような生理的な反応が起きているのか、ということが課題になります。
体験しているお悩みは、実際にどのようなことが起きているからそうなっているのかという課題を自分で見つけるのは難しいです
お悩み≠解決すべき課題
お悩みの原因として、私たちの「からだ」のなかでどのような生理的な反応が起きているのか、ということが課題になります
緊張したり、あがったりして、本番で実力が発揮できない生理的な理由は大きく3つあるが、多くの演奏指導者が知らないから、解決すべき課題を見つけることができない。
以上は、この講座でもご案内する本講座を受講して得られるものです。
この講座では、スタートとして、舞台で実力が発揮できない原因がなにかということを絞り込みます。
2013年8月から、かわかみ先生のレッスンを受けています※1。
コロナ禍が始まったときに、練習の仕方を変えるチャンスだと思いました。
ちょうどそのタイミングで、かわかみ先生のオンライン・レッスンが始まり、毎月の1回から数回受講するようになりました。
日々の身体のコンディションを整えるワークを毎日実習していくうちに、今まではレッスンを受けていても、先生に調整していた出したいる感覚でいました。
でも、今は不調なときや、思うような表現ができないときに、どのように取り組んだら、解決してゆけるのか、自分でできるようになりました。
2003年から、アレクサンダーテクニークを演奏家やダンサーなどの舞台芸術家を中心に教えている。
2007年から、全国の楽器店(ヤマハミュージックリテイリング、カワイ楽器)のご依頼で、演奏家向けの講座を行う。
2011年以降、全国の陸海空の自衛隊音楽隊にて指導。
2017年から、カワイ音楽教育シンポジウムで講師を務める(九州・沖縄地区、京阪地区、東北地区、北関東地区)。
2019年3月『実力が120%発揮できる!ピアノがうまくなる からだ作りワークブック』(ヤマハミュージックメディア)を出版。現在まで4刷りされる。
2019年まで、東京学芸大学音楽専修入門セミナーの講師を務める。
フォーカルジストニアの方たちにもっと確実に効果が上がるレッスンができるようになりたくて、2012年から2015年に身体志向のトラウマ療法であるソマティック・エクスペリエンスの訓練を受ける
2021年より、演奏家指導者が、からだの使い方を教えることができるようになるための響く音メソッド©の講師の養成を始める。