ハイヒールで楽に歩く~アレクサンダー・テクニークを使って

2012年4月10日の銀座おとな塾にて、「ハイヒールで楽に歩く~アレクサンダー・テクニークを使って」というお講座をしました。

そのときの講義メモと振り返りノートより抜粋し、お伝えします。

参加者の方たちは、全員女性でした。女性限定講座ではありませんでしたし、おひとりくらいハイヒールを常用される男性がいらしたら、面白かったのですが。。。

まずアレクサンダー・テクニークの基本に関して説明しました。
私たちは、ビックリしたとき、何か活動を始めようとしたとき、動きが切り替わろうとするときに、次のような「からだ」を縮みこませる癖をしがちです。

どのようにかというと、
上を見上げるときに必要な緊張を起こす首の筋肉と、下を見下ろすときに必要な近著を起こす筋肉を同時に緊張させ
胸から腕に向かう筋肉と、背中から腕に向かう筋肉を同時に緊張させ、
人によって、胸からお腹にかけての筋肉を、人によっては、背中側の肩甲骨の間からおへその後ろ側までの筋肉を、人によってはその両方を緊張させ、
そして太ももを正面に持ち上げる筋肉と、脚を後ろに持ち上げる筋肉を同時に緊張させてしまう。

それを防ぐために、少し時間を上げて(余裕をあげて)
癖(くせ)が起こることを防ぐために方向(ここについては後日補います)を思います。

そうしたら、「からだ」の動きが軽やかになります。

立ったり、座ったり、歩いたり、振り返ったり、腕を上に持ち上げたり、日常生活で行うこれらの動きを新しいやり方で体験していただいた後、いよいよ本題に入ります。

ハイヒールをはいて、足が痛くなるのは、たいていの場合、靴の中で足が前に滑っているからです。
そして、ではどうしてそれが起こっているかと言うと、

<理由1>
まず足の構造に関する誤解。
膝から下と足にかけては、けっしてL字形をしていません。
足首から後ろと前に重さが分かれてゆくのです。

おひとりおひとりに足の構造のボディマッピング(ウィリアム・コナブル博士から
かつて学んだ方法を、自分なりに発展させたオリジナルの手順です)。

これを経験していただくと、たいていの方は足が温かくなり、足が伸びたり、広がって
地面にしっかり、楽に着地していただけるようになります。

繰り返していっしょに何度も行うと、この手順はひとりで行えるようになります。

<理由2>
股関節を固めている。言い換えると、骨盤を、膝の曲がって行く方向(前方下方向に押し下げている)

世間で言ういわゆる「まっすぐ立っている」ときは、骨盤下部=恥骨から坐骨までは斜め下を向いているのです。

<理由3>
胴体の奥行きを失い、腰や胸を前に突き出している。

<理由4>
頭を後ろに引いている。
女性誌でよく書かれている、「背中のラインと頭の後ろを合わせる」「耳の穴の位置と肩とを合わせる」
ああいうことは、紳士淑女の皆さんと、よいこのみなさんは、けっしてマネをしてはいけません。

頭部(頭蓋骨の中身と表面と額骨も含めた頭部ね)の重心は、耳の穴より斜め上で、目の後ろ側にあります。

さて、ここで、クイズです。
仮に身体を通り抜ける糸と錘(おもり)があって、いわゆる「まっすぐ立っている」ときに、頭部の重心からぶら下げたら、背骨とはどこで出会うでしょうか?
イジワル・クイズです。

答えを申し上げます。もし楽に自由に立てていれば、どことも交わりません。
けれども女性誌推奨の姿勢をしたら、交わりますね。そして首や背中や腰といわれるところが硬く緊張し、胴体の奥行きがなくなるので、呼吸が制限されます。

はあー、これ書いちゃったから、マガジンハウスさんの「anan」さんに私のレッスンが取り上げられることは、けっしてないでしょうねえ。

でも、真実は曲げられません。

所謂モデルさんの姿勢は、服を美しく見せるための特殊な姿勢で、標準的に一般の人たちにおすすめできる姿勢ではありません。

いわゆるモデルさんの姿勢を「からだ」に負担をかけずに行うことも可能ですが、一般人には、必要ないかと。その方法をお知りになりたい方は、レッスンにいらしてください。
いっしょにやらないと、ものすごく誤解されそうなので、ブログでは公開できません。

<理由2>から<理由4>によって、「からだ」は奥行きを失って、上から斜め前方方向に落ちてゆきますので(このとき「からだ」自体は斜め後ろに傾きます)、ますます足の裏の前方に重さが下りてゆき、足はますます靴の中で前方にすべり、痛くなるのです。

では<理由2>から<理由4>を解決するために、どうすればよいのでしょうか?

賢いみなさんは、もうお気づきでしょう。アレクサンダー・テクニークを使うのです。

ただし、今回は女性が多いこともありましたので、足から行う手順で、ワークしました。
1回目の首・頭からの手順とどちらか馴染みやすいものを使っていただければよいなあと思いました。

ハイヒールを履く前に、爪先立ち(バレエでいうところのルルベ)とからだを前方にも後方にも倒さないで膝を曲げるワークもしました。

全身の大きさを取り戻すための方向と足首から踵(かかと)の方向をはっきりさせるためです。
アレクサンダー・テクニークをの基本どおりにからだを大きく使って、つま先立ちしたら、背中側のどこも過度な緊張はしませんし、股関節は解放されたままです。

このようにして爪先立ちになると、最初はふらつく方もいらっしゃいますが、踵(かかと)への方向を思い出したら、からだはぐらつきません。

さて、この後ハイヒールを履いて、みなさんに歩いていただきました。
「かっるーい♪」
「ぜんぜん、いたくなーい」
と好評でした。

この後、重いかばんを肩にかけて歩く、というもやりました。

図解を見たい方、実際にレッスンを体験されたい方は、ぜひこちらのレッスンのご案内をご参照くださいませ。

いわゆる健康法・その他の指導者の方たちへ
このブログの内容を参照されて、今後同じテーマでWSをされるのはご自由ですが(推奨はいたしませんが)、その際には出典・参考資料等を明らかにしてくださいませ。
ただし、仮にあなた様のこのブログの内容や人間への不十分な理解のために、あなた様があなたの生徒さんに損害を与えても、当方は責任を負いかねますことを付け加えさせていただきます(最近、ほとんど専門的な訓練を受けないで、教える人が多く、あちらこちらで問題になっています。どうやらその中には、私のブログの内容を誤解して教えたグループもいたようで、それが私の耳にも届いたので、念のための付記します)。

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ABOUT US
かわかみ ひろひこアレクサンダーテクニークの学校 代表
第3世代のアレクサンダーテクニーク教師。2003年より教えている。 依頼人である生徒さんへの共感力、課題改善のための活動の動きや言葉に対する観察力と分析力、適確な指示、丁寧なレッスンで定評がある。
『実力が120%発揮できる!ピアノがうまくなる からだ作りワークブック』、『実力が120%発揮できる!緊張しない からだ作りワークブック』(ともにヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)の著者。
アレクサンダーテクニーク教師かわかみひろひこのプロフィールの詳細