アレクサンダーテクニークは、活動中の「からだ」の使い方を含む「自分自身」の使い方を改善することによって、「からだ」や「こころ」の快適さを増し、表現力・運動能力・判断力の向上やストレス耐性の強化に役立つものだ。
特に時間と場所を必要とせず、いつでもできるというところに大きな利点がある。

しかし、アレクサンダー・テクニークにも、特別な場所と時間を必要とする補助的な手順がある。セミシュパイン(横たわりの手順)やウォール・ワークももそのなかの1つだ。

このセミシュパインの手順について、「必要ない」「私は教えない」という教師もいる。そういう教師のなかにもすばらしいスキルをお持ちの方はいる。私が尊敬するアレクサンダーテクニークの教師のひとりキャシー・マデンさんもそういった教師の一人だ。

しかし私はそういう方たちとは別の見解を持っている。これは私がアレクサンダー・テクニークの教師になるための訓練を受けていたときに、勤務先の倒産とその再建に関わるという珍しい経験があるからだと思う。
半年間、半日だけとった休日を除いて、毎日朝の7時過ぎから夜の25時、26時過ぎまで働き、もちろんその間は教師養成コースにも行くことはできなかったし、レッスンを受けることもできなかった。

忙しい中で、精一杯「自分自身」に注意を払い、使い方を気をつけた。それでも大変になったときにはトイレに行くふりをして、非常階段に行って、1回だけ背中を壁にもたれるウォールワークをする。
わずか30秒たらずのそのプロセスの中で、私は「からだ」の大きさ、自分自身の大きさを取り戻し、オフィスに戻る。

昼休みは、食事の後、書類倉庫にプチプチ・シートを敷いて、セミ・シュパインの手順を15分行う。これによって午後一番は、朝一番と同じだけ仕事の効率が上がるようになる。もちろん気持ちも落ち着く。

当時私の命をつないだのは、これは誇張ではなく文字通り命を救ってくれたのは、これらの手順であった。
これら手順を行うことで、私はもう1度アレクサンダー・テクニークの原理をしっかりと思い出し、忙しい日常の中で実践し続けることができたのだ。
私は「からだ」を壊さなかったし、精神的に病まなかった。
大勢の同僚や先輩が仕事が少し落ち着いてから、うつ病や自律神経失調症になっていくなかで、数名の方たちが過労死していく中で。

「そんな手順は必要ない」というアレクサンダーテクニーク教師に問う。

あなたは私が経験したのと同じくらい過酷な状況に半年間以上身を置いたことがあるのかどうかと。

もしないのであれば、今後は先師から受け継がれた手順は必要ないとは言わないことだ。

経験がなければ、なにも立証できていないのだから。

そのような特殊なケースは想定していないというのではお粗末すぎる。いつだれの身の上にどんな事が起こるのか分からない、それが今の日本だ。否、いつだって、どこでだってそうだったはずだ。

次回は背骨の生理学的な仕組みと絡めながら、セミシュパイン(横たわり)の手順を説明します。