レッスンを熱心にご受講くださっている、ボサノヴァのフルート奏者大久保はるかさんによる、日本フルート協会会報に掲載されたアレクサンダーテクニークのレッスン・レポートその6です。 大久保はるかさんのご厚意により、転載させていただきます。

 

引用元 日本フルート協会会報 No.236 2013年2月号

 

フルートとアレクサンダーテクニーク6 最終回

日本フルート協会会報に連載中のアレクサンダーテクニークレッスン受講記録ですが、丸1年にわたる連載が終盤、最終回の原稿提出を終えました。下記の記事は2月末に配布予定ですのでまだ未発表原稿です。

 

最近ぽつぽつですが、「アレクサンダー関係の記事、楽しみにしてます」と、お声がけいただいている当ブログファンの方々へ、こっそりといち早くお届けいたします~

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《 フルート演奏における身体コンディション調整とアレクサンダーテクニーク 6 (最終回)》

大久保はるか (No.5357)

連載最終回である今回は、アレクサンダー・テクニーク・インターナショナル【ATI】認定教師かわかみひろひこ氏へ、インタビューを行いました。

 

―――――連載を終えて
大久保 約1年間の連載でした。私はアレクサンダーテクニークを学び始めて2年半から3年半、という期間での受講記録でした。率直に伺いますが、この一年間の私は、先生から見てどのような生徒だったのでしょうか?

 

かわかみ レッスンを上手く使える人で、ご自分で色々と発見をされる人だな、と思いましたね。教師を上手く使える、あるいは教師の手を上手く使える方、とも言えると思いますが。とても創造的にレッスンを使っていると思いました。

 

大久保 そうですか、お褒めのお言葉をありがとうございます。自分ではその辺りのことはよく分かりませんが、レッスンでは必ず何かをキャッチして帰りたい、という貪欲な気持ちで臨んでいます。

―――――アレクサンダーテクニークとの出会い
大久保 次に先生ご自身の事をお伺いします。「アレクサンダーテクニーク」との出会いはいつ、そして何故アレクサンダーテクニークを学ぼうと思われたのですか?

 

かわかみ 18、9歳の時でしたので、今から24、5年前です。当時古武道を始めていて、その関連で礼法と呼ばれる武士の礼儀作法の本について、図書館で調べていました。その時に借りたい本の隣にアレクサンダーテクニークの本(「アレクサンダー・テクニーク入門―能力を出しきるからだの使い方」サラ・バーカー著の旧版)があり、ついでに一緒に借りてきたことがきっかけです。読んでみたらおもしろかったので、習ってみたいなと思い、連絡先を見たらアメリカ合衆国となっていたので、その時はあきらめました。

 

その後、25歳の時に「アレクサンダーと私―〈アレクサンダー・テクニーク〉への道 」という本に出会いました。面白い本でしたが、よくわからないことも多く、やはり習いたいと思いましたが、日本ではレッスンを受けることが出来そうにないな、と思って再びあきらめました。
その頃、古武道に上達していないことに伸び悩んでいました。そんなある日、本屋で偶然手にした雑誌にアレクサンダーテクニークのワークショプの案内記事を見つけました。日付を見たら既に終了していたのですが、主催者へ電話をして次回の案内を頂き、初めて受講したのが26歳の時、1997年4月、先生はスイス人のイムレ・トールマン氏でした。
それは、古武道を行う上で何か役に立つであろう、とワラにもすがるような思いでした。

 

―――――意外なきっかけ
大久保 アレクサンダーテクニーク教師を目指すことになったきっかけは?

 

かわかみ 97、8年当時の東京には、アレクサンダーテクニーク教師になるためのトレーニングコースは、本格的な形としては存在していませんでした。それでは教師養成コースなるものを作ってしまおうではないか、という話が仲間内で盛り上がり、片桐ユズルさんの強力なサポートのもと私を含め数名で養成コースを立ち上げました。

 

教師陣は、イムレ氏、時々来日されるベテラン教師ブルース・ファートマン氏、その頃から日本に住むことになったジェレミー・チャンス氏、そして日本人のアレクサンダーテクニークの教師としてすでに御活躍中の小野ひとみ氏、芳野香氏にお願いすることになり、99年4月にスタートしました(後にこの体制は2000年の9月の終わりに崩壊する)。
当初私はあくまでもオーガナイザーとしての参加に留まるつもりでいましたが、いざ養成コースが出来上がって、いち早くトレーニングをし始めた方々を見るにつけ、少し頼りないのでは?という思い(勘違い!?)と、羨ましい、という気持ちが芽生えてきましたので、私もトレーニー(訓練生)として参加してみることにしました。

 

―――――『内臓のボディ・マッピング』について
大久保 アレクサンダーテクニークでは、頭と脊椎の関係性や、筋肉について着目するところに特徴があると思いますが、かわかみ先生のレッスンでは『内臓のボディ・マッピング』というオリジナルのアプローチも取り入れていらっしゃいますね。実際、アレクサンダーテクニークと併用して学ぶ事で、その効果を感じている生徒さんも多いとお聞きしています。レッスンに取り入れるようになった経緯を教えてください。

 

かわかみ もともと私はおなかが弱く、内臓があまり丈夫ではありませんでした。「自分の内臓に微笑みかける」というワークを自分のためだけに行っていました。世界に、そして自分自身に微笑みかけるというアイディアは、元来アレクサンダーテクニークにはありました。それをヒントにしました。
ある日、「本番の1週間前になると緊張の余りおなかが詰まる(便秘になる)んです」というバイオリン奏者の生徒さんに紹介したところ、とても状態の改善に役立ったそうです。その後同じような悩みを持つ生徒さん達や、本番で“あがって”実力が発揮できない生徒さんたちに(いわゆるあがり症の生徒さんたちに)ご紹介し、次々と状況が改善されていく様子を見て、また脳科学などの分野でも内臓との深いつながりがとりだたされていることを知り、レッスンに取り入れるようになりました。

 

大久保 ちなみに私は、かわかみ先生から『内臓のボディ・マッピング』という言葉を初めてお聞きした瞬間、大きく開眼しました。それまでは、自分のからだは、骨と皮と筋肉、そして余計な脂肪(笑)だけで成り立っているように思ってしまっていたんだと思います。

 

―――――どうして音楽家でない人が音楽家へ指導できるのか?
大久保 私がアレクサンダーテクニークを学んでいるという話をすると、よく人に聞かれることがあります。「フルート奏者ではない方が、何故フルート演奏時の姿勢やブレスのことなどについてのアドバイスが出来るのでしょうか」という質問です。実際先生は、生徒の動き、「人間の動き」を見ている、ということなのでしょうか?

 

かわかみ 人間の動きの中に現れる、「全体のつながり」を見ています。つながりが上手くいっているのか、ちょっと邪魔をしているのか、を見ています。もし邪魔をしているようなところを発見した場合にはそれを指摘し、演奏活動における全身とのつながりよくなるためのアドバイスを与えます。

 

大久保 レッスンでは、手と言葉を使ってアドバイスを与えますが、その能力を高めていく訓練はどのように行うのですか?

 

かわかみ 教師のトレーニング中に訓練生が行うことは、第1に自分自身が活動するときに自分自身がやっているつもりのことと実際にやっていることの違いに出会い、自分自身がやりたいことをじゃまする癖(くせ)をやめていくことでした。

 

これを教師養成コースにいる間だけではなく、日常も行うことによって、自分自身の活動とその活動の質を変えることに上達していきます。言ってみれば、”1人称の経験”のプロになるわけです。

 

そして次に(実際には同時並行になりますが)、人が行う活動で、その方がやりたいことと実際に行なっていることとの違いを観察し、なにをやりたいのかを聞き出す方法も身につけ、存在そのもの(安心感やゆったりした気持ちを引き起こす、全身が解放され、勢いのある様)と手と言葉を使って適切にアドバイスする方法を学びます。

 

言い換えると、レッスンルームが、なにか新しい発見が起こる”場”になるようにする方法を身に付けていくわけです。

 

そのようにして、アレクサンダー・テクニークの教師トレーニング中に、1人称的な経験と2人称的な経験のプロになるわけです。その後、実際教える現場での経験を積みながら、生徒の癖や演奏などの具体的なアクティビティーに何が必要で何が必要でないかを判別し、手と言葉を使ってアドバイスする能力を更に高めてゆきます。

 

―――――教師選びは慎重に
大久保 最後に、これからアレクサンダーテクニークのレッスン受講を考えているフルーティストの方々へ、何かメーセージをお願いいたします。

 

かわかみ レッスンをどのように利用するか、また利用出来るか、という所が大事だと思います。教師選びは慎重に行った上、ひとたびレッスンすることを決めたら、「よくわからないな」と思ったとしても最低15レッスンは受けてみることをおすすめいたします。

 

その上で、この度大久保さんの受講記録に書いてあったような良いことが自分には起きそうにないな、と思ったら、レッスンそのものを止める、もしくは先生を変えることを考えてみてもよいと思います。

 

大久保 なるほど。フルートのレッスンにもあてはめて考える事が出来る、貴重なご意見ですね。私はアレクサンダーテクニークの先生は、かわかみ先生が3人目の先生です。最初はインターネットで検索をかけ、なるべく近くで、仮に先生と馬が合わないようなことがあったらすぐに後腐れなく終了する事が出来そうな会場、という考えで選び、某カルチャーセンターの短期グループレッスンを受講したところから始まりました。

 

講師は上原知子先生で、その後1年程グループレッスンと個人レッスンを受講しました。後に上原先生がご懐妊され産休に入られ、代わりにご紹介頂いたのが、石井ゆり子先生です。個人レッスンを1年程続けました。そのうちに、出来る事なら音楽家が数多く集まるグループレッスンに参加してみたい、という思いが強くなり、音楽スタジオで定期的に行われているかわかみ先生のグループレッスンを受講したのが2011年8月の事でした。今思うのは、過去お2人の先生、そしてかわかみ先生との出会いについて、その時々の自分の成長ぶりに対してはジャストなタイミングで巡り合ってきているように思います。

 

いかがでしたでしょうか。フルートのレッスン同様、学び始めて2、3年目というのは、全くのビギナーからはようやく脱却しつつも、その奥深さに難しさを覚え始める時期のような気がします。色々と悩み、迷い、探りながら、これからも身体と心にやさしいフルート奏法を追求してゆきたいと思います。今後のレッスン記録はブログにて随時アップしてゆく予定です。ご興味のある方はご覧下さい。今回の連載が少しでもみなさまのお役に立てるのであれば光栄です。

 

 

大久保はるかブログ Look To The Sky

 

 

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