作成日:2011/4/11

この資料は福岡で2011年4月に開催されたベテランのアレクサンダー教師でSTATの元チェアマンのドロシア・マゴネットさんのワークショップの通訳とオーガナイザーのために、ボランティアで作成致しました。そのため英語と日本語が混じっています。

 

はじめに

アレクサンダー・テクニークは、自分自身の使い方(use of the self)の再教育(re-education)です。

そしてその根幹は刺激(stimulus)に対する反応(response or reaction)を変えることです。あるいはその空間・その状況に応じて反応できることです。

さらに言い換えると、適切に次の活動のやり方を選択できるようになることです。

そこから次の7つの原理が導き出されます。

ただし、これから取り上げる「7つの原理」はあくまでも一例です。さまざまなアレクサンダー教師が、さまざまな「7つの原理」を出版物やホームページに掲載しています。

それら別の例についても、できるだけ適宜触れてゆきます。

以下は、あくまでも一例としてのアレクサンダー・テクニークの7大原理です。

1. PSYCHO-PHYSICAL UNITY

私たちの存在は、「こころ」と「からだ」の結びつき、「こころ」と「からだ」が結びついたものであること、あるいは「こころ」と「からだ」がいっしょに働くということ。

 

日本語訳の本では、「心身統一体」と訳されることもある。

※spiritual「霊性」も入れることもある。その場合は、「こころ」と「からだ」と「霊性」の結びつきとなる。

例えば、舞台の本番前で緊張しているとき、それは「からだ」だけが緊張している訳ではないし、「こころ」だけが緊張している訳ではありませんね?

例えば、幸せなとき、それは「こころ」だけが幸せな訳でも、「からだ」だけが幸せな訳でもありませんね。私たちの存在は「こころ」と「からだ」(と「霊性」)に分けられないのです。

同義語:the unity of MIND and BODYとも。

類義語:unified field of attention

[「からだ」の内側と「からだ」の外側の]意識の統一場(統一された場)。

自分の「からだ」ばかりに注意が向くと、しばしば「からだ」はcollapseする(つぶれる)。それを防ぐには自分自身の「からだ」だけではなく、同時に「からだ」の外側の空間・環境に注意を向ける必要がある。

 

 

2. FAULTY SENSORY APPRECIATION 当てにならない感覚的評価(感覚的解釈)

感覚は分かるけれど、感覚的評価ってなに?と思われた方が多いかもしれませんね。以下に解説します。

前かがみの方の当てにならない感覚的評価

前かがみの方の当てにならない感覚的評価

例えばいつも前かがみになっている人が、アレクサンダーレッスンを受けると、とてもいばった姿勢をしているかのように自分自身では感じることがあります。

感覚:いつもより頭や胴体の上の方が後ろへ行った。

→それをいばった姿勢と誤って解釈している。

背中を潰した方の当てにならない感覚的評価例えば、いつも反り返っている人が、アレクサンダーレッスンを受けると、前かがみの姿勢をしているかのように自分自身では感じることがある。

感覚:いつもより頭や胴体の上の方が前へ行った。

→それを前かがみの姿勢と誤って解釈している。

したがって、アレクサンダー・テクニークには、感覚(特に固有感覚proprioception)と感覚的評価の再教育という側面があります。

 

 

3. PRIMARY CONTROL

訳はプライマリー・コントロールでよい。

日本語の訳本では、初原的調整作用と訳されることも。→欧米でも受講者から質問が出るところ。言葉だけを聞いて、受講者が分からなくても当然なので、通訳者は説明をしなくてよい。そうしたら受講者が講師に説明を求めます。

癖(くせ)をやめれば自由になれて、存在力・運動能力・表現力が進歩する。その原動力として、アレクサンダーが想定した、私たちすべての人に備わった、全身と空間と活動を協調させる能力。
ただし「磨かれたプライマリー・コントロール」と、「さびついたプライマリー・コントロール」というふうに、上記の定義とは若干異なる意味で使う人もいる。

<関連>
HEAD-NECK-BACK relationship(頭と首と背中の関係性)
the coordination of head-neck-back(頭と首と背中の協調)

 

 

4. MEANS-WHEREBY (as opposed to END-GAINING)

[その瞬間、その空間における活動に]必要な方法・手段。

アレクサンダーは当初meansとのみ言ったが、聞き流されることを恐れて、あるいは読み飛ばされることを恐れてwhereby「そこにある」をつけて生徒に注意を促した。

→欧米でも受講者から質問が出るところ。言葉だけを聞いて、受講者が分からなくても当然なので、通訳者は説明をしなくてよい。そうしたら受講者が講師に説明を求めます。

対義語:END-GAININGエンドゲイニング:[ある活動をするときに]手段を顧みず目的に突進すること

関連:direction(訳はディレクションでよい:方向性:指示)means wherebyのもっとも根幹の部分。話し手によって、広義のdirectionにはmeans wherebyが含まれることがあるし、逆に広義のmeans wherebyにdirectionが含まれることがある。

→欧米でも受講者から質問が出るところ。言葉だけを聞いて、受講者が分からなくても当然。

関連:opposition(訳はオポジションでよい:反対という意味;

例えば腕を前に差し出すとき、あるいはからだを前に傾けるとき、back back-「背中は後ろへ」は、前に対するオポジションになる)

→欧米でも受講者から質問が出るところ。あまり使わない教師も

関連 the position of mechanical advantage 機能的優位な姿勢 こちらをご参照ください。

 

 

5. OBSERVE HABITUAL REACTIONS & MOVEMENTS

習慣的な反応や動きを観察する=気づきを深める。もちろん周囲の空間や環境とつながりながら。

ご参照:unified field of attentionのところをご覧ください。

「habit=癖の根強さ」を入れる人もいる。長く学べば学ぶほど、私たちの癖は根強いことが分かる。しかしそのことを本当に自覚すればするほど、私たちは私たちの存在そのものと活動をより洗練することができます。

 

 

6. INHIBITION

なにかをしようとするときの習慣的な癖くせ)をやめるという意味ですが、訳語は「インヒビション」でよいです。あるいは「抑制」 あるいは「ちょっと待つ」

→欧米でも受講者から質問が出るところ。言葉だけを聞いて、受講者が分からなくても当然なので、通訳者は説明をしなくてよい。そうしたら受講者が講師に説明を求めます。

同義語:allow time to say no

Walter Carringtonウォルター カリントンによる「インヒビション」の言い換えの一例。 [癖に]ノーという時間(空間という意味もある)を許す。

同義語:I have time.

Patrick Macdonaldパトリック・マクドナルドによる「インヒビション」の言い換えの一例。 私には時間があるわ♪(俺には時間があるぜ!)

用法としては、何かをしようとした瞬間に、ちょっとまって(インヒビション)、そして方向を与える(ダイレクション)。

何かをしようとする瞬間は、癖(くせ)が忍び寄る瞬間でもある。

この瞬間をF.M.アレクサンダーはcritical moment「決定的瞬間」と呼んだ。私たちの活動の質を選択できる瞬間である(あくまでも可能性だが)。

アレクサンダー・テクニークはその活動の質を選択する可能性を高めるのに役立つ。

 

 

7. CONSTRUCTIVE CONSCIOUS CONTROL

建設的意識的コントロール

→欧米でも受講者から質問が出るところ。言葉だけを聞いて、言葉だけを聞いて、受講者が分からなくても当然なので、通訳者は説明をしなくてよい。そうしたら受講者が講師に説明を求めます。

つまり私たちのthinking(思うこと)- inhibition and directionにより、私たちは建設的(あるいは創造的:「よいことがおこるよ」という意味⇔構造を破壊すること)に活動できるという意味。

「Use(使い方:刺激に対する反応を変えること)がfunction(機能)に影響し、functionがstructure(構造)に影響する」を代わりに挙げる人がいる。

indirect procedure(間接的手順)を挙げる人もいる。

アレクサンダー・テクニークのレッスンでは直接構造に変化を与えません。教師たち、生徒さんたちの日々の実践においても、直接構造に変化を与えません。

レッスンで行うのは、使い方を変えることです。言い換えると、刺激に対する反応を変えることです。

結果的に機能が変わり(動きやすくなったり、演奏中の音の響きが増したり)、骨格や筋肉にかかる力学的な力が変わるために、構造も変わることもあります(若返ったり、スタイルがよくなったり、より雰囲気が洗練されたり、明るい感じになったりすることもあります)。

それらの好ましい結果は、その瞬間その環境に必要なプロセスを踏んだ結果として現れます。
それらの好ましい結果にとらわれると、end-gainingになるので、注意が必要です。
基本的なdirectionはいつも同じですが、細かな手段は状況によって当然異なります。

例えば大きな声を張り上げる声楽家(特に学生に多いが)の伴奏をするピアニストは大きな音で弾いてもよいのですが、管楽器奏者の伴奏するときには彼らの音が聞こえるように、彼らを引き立てるように音を抑えて演奏する必要があることもありますね。

ホールの大きさによっても、そのホールの音響の特徴によっても、当然手段は異なりますね。

アレクサンダーテクニークの7つの原理はいかがでしたでしょうか? 賢明なみなさんは、これらの原理が相互に密接に関連していることにお気づきにいなったことでしょう。

 

 

 

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