10年以上前に継続的に京都の芳野香先生のレッスンを受けていたときに、常々そのようにおっしゃっていたことが印象に残っています。

当時は教師トレーニングに行く前でした。どうして芳野先生がそのようなお考えに至られたのか、私には分かりません。

しかし、例外はあるものの、基本的にも私も現在は「生徒さんのお話を聞くのもアレクサンダ-教師のお仕事だ」と思っています。

2007年から数年間、故吉本武史先生という催眠療法がご専門の臨床心理士のお講座に継続的に通っていたことがあります。当時私はアレクサンダー・テクニークの教師として、はじめて忙しくなったころで、毎月140レッスン以上の個人レッスンと、月3回のグループレッスンを行っていました(今はそれほど忙しくありません)。

アレクサンダーテクニークの教え方に既にあった、自分自身のあり方や言葉の使い方が生徒さんにどのように影響するかについて、別の角度から深く学びたかったからです。

ずっと心ひかれた心理療法家にはぜったいになることはないだろうなと決めることができたのは、その数年間の学びの成果だと思いますし、その後も折に触れて、あの学びの経験は役立っています。

吉本先生が最初のクラスでおっしゃったことは、今でも強く印象に残っています。

相手の言うことに共感を抱いて聞くというのはカール・ロジャーズが始めた方法で、現在ではいろいろなカウンセラーが用いています。
吉本先生がおっしゃったのは

共感を抱いて聞くのは、ラポール(信頼関係)を築くための「手段」ではなくて、
共感を抱いて聞くことそれ自体が「目的」である。
そして、例えどういう手法を用いるにせよ、基本的なスタンスとして、すべての心理療法をする人たちは、相手に「共感」して行うのが望ましい、

ということでした。
私が思うに、そういう考え方はもともとアレクサンダー・テクニークの教え方にありますが、そのようにダイレクトに聞いたことはありませんでした。とても感銘を受け、レッスンに取り入れました。

これは最近心理学がご専門の生徒さんから伺った話ですが、

後になってロジャーズは、心理療法の効果がある人とない人に関して大がかりな調査を行いました。ウィスコンシン・プロジェクトと言います。
その結果分かったのは、効果が上がるキーとなるのは、共感を抱いた傾聴というアプローチよりも、むしろクライエントが自分の心の実感に触れられるかどうかが重要であるということでした(これを専門用語でフェルトセンスといい、フォーカシングやソマティック・エクスペリエンスなどの心理ワークではフェルトセンスを掘り下げます)。

私は思うのです。
「からだ」の使い方->自分自身の使い方って、けっこう過去の経験の影響も受けていると。
最近話題になることが多くなった、フォーカルジストニアも、かなり経験の記憶の影響を受けているらしい。。。
なるべく経験が癖の原因にならないようにするためには、お話されたい生徒さんには、お話をしていただき、ご自分の心の実感に触れていただけるようにサポートできることが重要になります。
そうすることで、癖の原因になる、淀みをなくしてゆける。

だから生徒さんがご自分の実感に触れていけることを前提に、私自身が行うアレクサンダー・テクニークのレッスンでは生徒さんのお話を傾聴します。

もし迷路に嵌りそうだったら、お話を聞くことは途中で打ち切って、「座ったり、立ったり」のレッスンやランジなどのアレクサンダーテクニークのプロシジャを行うこともあります。混乱していらっしゃる方とは、あまりアクテティビティのレッスン(生徒さんにやることをえらんでいただくレッスン)はしません。

それを判断するのは、自分自身の経験に基づく主観的な判断です。それ以外にはありえません(こういうことは客観的に判断できないのです)。

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